英文契約書
私が弁護士になったころはそうでもなかったのですが、最近は国内企業同士の契約書でも、準拠法条項や「○○を含むがこれに限られない」とか「および/または」という表現が使われる契約書を見かけることが増えてきました。これらは英文契約書によく使われる条項や表現ですので、海外企業から来た契約書を国内の企業との契約書を作る際に参考にすることが増えたのではないかと想像しています。
また、国内市場で事業を営んでいる会社であっても、海外企業との取引経験がある会社も増えてきたと思います。そのような場合、普通は英文で契約書を取り交わすことが通常です(相手が韓国企業ですと日本語の契約書を用意してくれることが多いですし、ロシア企業(制裁の関係で件数は少ないでしょうが。)や中国企業ですと、ロシア語であったり中国語であったりしますが。)。
このように、現代社会では、大なり小なり英文契約書と関わりを持つことが多いです。和文契約書に表現を取り込んだだけであれば意味は分かりますが、英文契約書だとそう簡単ではありません。英語を得意としていない日本人は多いですが、理由はそれだけではありません。
英文契約書で使われる英語は、通常の英語とはかなり毛色が変わっています。
たとえば、伝統的な体裁の英文契約書では「witnesseth」という言葉が用いられますが、学校で「witnesseth」を勉強した人はおそらくほとんどいないでしょう。この「witnesseth」は「以下のことを証明する」という意味の古英語です。英文契約書は伝統的に契約書全体が一文で記載されていて、契約書の冒頭にある「This Agreement」を主語とする動詞としてこの「witnesseth」があり、1条以下の各条項がその目的語となっているというのが、伝統的な英文契約書の構造になっています。
「whereas」という言葉もあまり馴染みがないでしょう。これは契約に至った経緯や動機を明らかにするフレーズに用いられる言葉です。
ほかにも「hereto」とか「thereunder」のような副詞もよく用いられますが、あまり馴染みのいる人はいないでしょう。「hereto」は「to here」の意味であり、英文契約書に記載されている場合は「to this Agreement」の意味になります。たとえば、「parties hereto」であれば「本契約の当事者」となります。同様に「thereunder」であれば「under there」であって、ここにいう「there」は契約書で引用されている別の書面を意味します。
また、pro rata(割合に応じて)とかbona fide(誠実に)といったラテン語が用いられたり、force majeure(不可抗力)のようなフランス語が用いられたりすることもあります。
このような法律英語を使わないようにしようという運動もあるようで、伝統的な英文契約書の体裁を取らない契約書も見かけるようになりました。しかし、まだ伝統的な英文契約書の体裁を取る契約書も多くあります。このような英文契約書が来ても、Google翻訳等で翻訳すればいいやと思われるかも知れません。たしかに、最近はGoogle翻訳等の精度がかなり上がってきたと感じています。しかし、翻訳が正しくないこともまだあります。契約書の概要を把握するための参考としてGoogle翻訳等を用いることは構わないと思うのですが、翻訳に誤りがあった場合のリスクは大きいです。契約書の内容を正しく理解するためには、英文契約書の取扱いのある弁護士に依頼することをお勧めします。